デッドリフトで吐きそうになる・立ちくらみがする問題

デッドリフトやスクワットをやっていると、セットの途中や終わった直後に吐きそうになったり、立ちくらみがしたりすることがある。特に高レップでやった時や、インターバルを短めにした時に起きやすい。

これ、40代になってから特にひどくなったと感じる人も多いんじゃないだろうか。

先に答えを言うと、原因はだいたい次の4つのどれか、あるいは複合だ。

  1. 息を止めて力んだ後、血圧が急降下している(立ちくらみ・めまいの主因)
  2. 胃に物が残っている、または空腹すぎる(吐き気・冷や汗の主因)
  3. 水分が足りていない(暑い時期、飲んだ翌日は特に)
  4. 心肺が追いついていない(高レップ・短インターバル・全身種目の組み合わせ)

スクワットやデッドリフトは全身の筋肉を一度に動員するので、酸素の消費量と血圧の振れ幅が他の種目とは比べ物にならない。ここに「息を止める癖」が乗ると、40代の血管は若い頃のようには受け止めてくれない。

でも、呼吸の仕方と、トレーニング前後のちょっとした段取り、それと心肺機能の強化で、かなり改善できる。

症状 起きやすい場面 主な原因 その場の対処
吐きそう・吐き気 高レップの直後、食後すぐ 胃腸の血流が筋肉に奪われる/胃に物が残っている バーを置いて座る。水は少しずつ。涼しい場所へ
立ちくらみ バーを置いて立ち上がった瞬間 力んだ後の血圧の急降下 すぐ直立しない。膝に手をついて一呼吸。座る
めまい・クラクラ・視界が暗くなる セット後半、限界近く 血圧の乱高下+酸欠。いわゆる迷走神経反射 即座る、または横になって足を上げる。倒れる前に
冷や汗・手が震える 空腹での朝トレ、減量中 低血糖 糖質を少量とる(バナナ・ゼリー)。その日は軽めに

以下、症状ごとに掘り下げる。

症状別:なぜ起きるのか、その場でどうするか

吐きそう・吐き気がする

高強度の運動中、体は血液を優先的に働いている筋肉へ回す。その分、胃や腸に行く血液が減って、消化がほぼ止まる。胃に食べ物が残った状態でこれをやると、行き場のない胃の内容物が「吐きそう」という信号になって返ってくる。

だから食後すぐのデッドリフトやスクワットは、フォームが完璧でも吐き気が出る。私の体感では、食後1時間〜3時間半くらいの範囲ならしっかりやれて、30分以内だと気持ち悪くなる。詳しくは初心者あるあるの記事にも書いたが、食事のタイミングはフォームと同じくらい効く。

もうひとつは水の飲み方。喉が渇いたからと一気に500ml飲んでセットに入ると、胃の中で水が揺れて吐き気を誘発する。セット間に一口ずつが基本。逆に脱水も吐き気の原因になるので、飲まないのではなく「少しずつこまめに」だ。二日酔いの日の筋トレで書いたように、飲んだ翌日は最初から脱水気味なので特に注意したい。

その場の対処:バーを置いて、ベンチに座る。前かがみで深呼吸。無理に立って歩き回らない。吐き気は数分で引くことが多いが、引かないならその日は終わりにする。

立ちくらみ(バーを置いた直後にフワッとする)

デッドリフトで一番多いのがこれ。仕組みはこうだ。

  1. 重いバーを引くとき、無意識に息を止めて力む
  2. 胸とお腹の中の圧力が上がり、血圧が一気に跳ね上がる
  3. バーを床に置いて息を吐いた瞬間、圧力が抜けて血圧が急降下する
  4. しかも大量の血液が脚の筋肉に集まっている状態で、体を起こす
  5. 頭に届く血液が一瞬足りなくなり、フワッとする

つまり立ちくらみは「血圧の落差」で起きている。重量が上がって力む時間が長くなるほど、落差も大きくなる。高血圧の傾向がある人や降圧薬を飲んでいる人はこの落差が出やすいので、筋トレと血圧の記事も合わせて読んでほしい。

その場の対処:バーを置いた後、すぐに直立しない。膝に手をついた前傾姿勢で一呼吸、二呼吸してから体を起こす。これだけでかなり防げる。それでもフワッとしたら、その場で座る。立ったまま我慢するのが一番危ない。

予防:レップの途中で息を吐くタイミングを作る(次の章で解説)。バーを置く動作をゆっくりにして、圧力が急に抜けないようにする。セットの最後のレップで「限界まで力み続ける」のをやめる。

めまい・クラクラする・視界が暗くなる

立ちくらみより一段重い症状。セット後半で目の前が白くなったり暗くなったり、冷や汗が出て耳が遠くなるような感覚。これは血圧の乱高下と酸欠が重なって、体が一時的に「血圧と心拍を落とす」方向に振れた状態で、いわゆる迷走神経反射と呼ばれる反応が絡んでいることが多い。

放っておくと失神につながる。ジムで一番危険なのは、症状そのものではなく倒れて頭を打つことだ。

その場の対処:予兆(視界が狭くなる、冷や汗、耳が遠くなる)を感じたら、迷わずその場で座る、できれば横になって足を上げる。ジムで横になるのは恥ずかしいかもしれないが、倒れる方がずっと恥ずかしいし危険だ。数分で回復するのが普通。回復してもその日は追い込まない。

予防:インターバルを長めに取る、レップ数を減らして重量で追い込む形に変える、そして心肺機能を上げる(後述のHIIT)。

冷や汗・手の震え(低血糖の可能性)

朝食前の朝トレや、減量中の空腹状態で高レップの脚トレをすると、冷や汗、手の震え、クラクラが出ることがある。これは血圧ではなくエネルギー切れ。デッドリフトやスクワットは糖質の消費が激しいので、空腹だと血糖が下がりやすい。

対処:バナナ1本、ゼリー飲料、おにぎり半分など、消化の早い糖質を少量とる。朝食と筋トレの関係で書いた通り、完全な空腹でやる必要はない。

基本の呼吸法:息を止めない

大原則

下ろすときに息を吸って、上げるときに息を吐く。

これがすべての種目に共通する基本の呼吸法。ただし、スクワットとデッドリフトは特に意識してほしい。

なぜ息を止めるとダメなのか

息を止めると腹腔内の圧力(腹圧)が急上昇して、血圧が一気に跳ね上がる。若い頃はそれでも平気だったかもしれないけど、40代以降は血圧の急上昇が以下のリスクにつながる。

  • めまい、立ちくらみ
  • 吐き気
  • 最悪の場合、失神

だから意識的に呼吸を続けることが大事。

これは私の感覚だけの話ではない。厚生労働省も筋力トレーニングの注意点として「血圧の急激な上昇を抑えるために、息をこらえないように注意してください」と明記している(健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023/筋力トレーニングについて)。

種目別の呼吸タイミング

種目 吸う(下ろす) 吐く(上げる)
スクワット しゃがむとき 立ち上がるとき
デッドリフト バーを下ろすとき バーを引き上げるとき
ベンチプレス バーを胸に下ろすとき バーを押し上げるとき

どの種目も「力を入れるとき(上げるとき)に吐く」と覚えればOK。

上級者向けの補足:バルサルバ法について

高重量を扱う上級者の間では、意図的に息を止めて腹圧をかける「バルサルバ法」というテクニックがある。これは体幹を安定させて腰を守る効果がある。

ただし、40代以上にはおすすめしない。理由は以下の通り。

  • 血圧が急激に上昇する(200mmHg以上になることも)
  • 40代以降は血管への負担が大きい
  • 息を止めることで気持ち悪さが悪化する

補足しておくと、スクワットやデッドリフトのフォーム記事で触れている「吸って腹圧をかけて、立ち上がりきってから吐く」は、1レップごとに息を入れ替える短い腹圧の話だ。ここで問題にしているのは、レップをまたいで息を止め続けたり、限界近くで何秒も力み続けること。低レップで1回ごとに呼吸を入れ替えるなら問題は起きにくい。高レップで息を止め続けるのが、吐き気と立ちくらみの温床になる。

ベルトを巻いて腹圧をサポートすれば、息を止めなくても体幹は安定する。バルサルバ法に頼らなくても安全にトレーニングできるので、40代は呼吸を続ける方法を徹底しよう。

それでも気持ち悪くなったら

正しい呼吸をしていても、きつい日は気持ち悪くなることがある。そういう時の対処法。

すぐに休憩する

無理しない。 これが一番大事。

気持ち悪くなったらセットの途中でもバーを置いていい。ベンチに座って深呼吸して、回復を待つ。「あと1レップ」を無理にやって倒れるのが一番危険。怪我予防の鉄則でも解説しているが、痛みや異変を感じたら即中止が基本だ。

インターバルを長めに取る

気持ち悪くなりやすい人は、セット間の休憩を長めに取る。

  • 通常:60〜90秒
  • 気持ち悪くなりやすい日:2〜3分

休憩を長く取ったからといって筋トレの効果が落ちるわけではない。むしろ回復した状態でしっかり重量を扱える方が効果は高い。

その日は切り上げてもいい

体調が悪い日は早めに切り上げる勇気も必要。「せっかくジムに来たのに」と思うかもしれないけど、気持ち悪い状態で続けてもいいことはない。

病院に行くべきサイン

ここまでの話は「健康な人が高強度でやった時に起きる、一過性の反応」が前提だ。次のどれかに当たるなら、筋トレの工夫の問題ではないので、一度は循環器内科などで診てもらってほしい。

  • 胸の痛み、締めつけられる感じを伴う
  • 実際に意識を失った、または倒れた
  • 休んでも15〜30分以上症状が引かない
  • 片側の手足のしびれ、ろれつが回らないなど、めまい以外の神経症状がある
  • 軽い重量、少ないレップでも毎回起きる
  • 高血圧、不整脈、貧血などの持病がある、または服薬中

40代は「若い頃はなかったから大丈夫」が通用しない年齢だ。原因が心臓や血管側にあるかどうかを一度確認しておくと、その後は安心して追い込める。

HIITで心肺を鍛えておく

根本的な解決策として、元気な時にHIIT(高強度インターバルトレーニング)で心肺機能を鍛えておくのが効果的。

なぜHIITが効くのか

心肺機能が上がると、高レップのスクワットやデッドリフトでも酸素の供給が追いつくようになる。結果として気持ち悪くなりにくくなる。

簡単なHIITメニュー

筋トレとは別の日に、週1〜2回でOK。

時間 内容
0:00-0:30 全力ダッシュ(エアロバイク or ランニング)
0:30-1:30 ゆっくり回復(軽く漕ぐ or 歩く)
繰り返し 4〜6セット
合計 約8〜12分

たった10分程度でいい。これを1〜2ヶ月続けると、スクワットやデッドリフトの後の気持ち悪さが明らかに減る。

注意点

  • HIITは心肺に大きな負荷がかかるので、体調が良い日だけやる
  • 高血圧の治療中の方は、主治医に相談してから始めること
  • 筋トレと同じ日にやると疲労が大きすぎるので、別の日に行うのが基本

よくある質問

スクワットでクラクラするのは、デッドリフトと原因が違う?

ほぼ同じ。しゃがんだ最下点で息を止め、立ち上がりで血圧が跳ね、ラックに戻して息を吐いた瞬間に落差が来る。スクワットは高レップ(15〜20回)でやる人が多いので、酸欠の要素がデッドリフトより強く出やすい。対処も同じで、レップごとに息を入れ替える、ラックに戻した後すぐ歩き出さない、インターバルを長く取る。

HIITをやると気持ち悪くなる。向いていない?

向き不向きではなく、強度かインターバルの設定がきつすぎるだけだと思う。最初は全力の8割、回復時間は倍(30秒全力/2分回復)から始めて、4セットで終わる。食後2時間は空ける。慣れてきたら回復時間を短くしていけばいい。それでも毎回気持ち悪くなるなら、上の「病院に行くべきサイン」を確認してほしい。

食後どのくらい空ければ吐き気は出ない?

一般には食後2時間程度と言われる。私の体感では1時間〜3時間半の範囲なら問題なくやれた。食事直後の30分以内は避ける。逆に4時間以上空くとエネルギー切れで別の意味でクラクラするので、その場合はバナナ1本だけ入れて行く。

吐きそうになったら、そのセットは最後までやるべき?

やらない。バーを置く。吐きそうな状態で続けるとフォームが崩れて腰を痛めるし、限界近くで力み続けると立ちくらみから失神につながる。「吐きそうになるまで追い込めた」は頑張りの証ではなく、酸素の供給と血圧の管理が追いついていないサインだと考えた方がいい。

若い頃は平気だったのに、40代で急に出るようになったのはなぜ?

心肺機能と血管の柔軟性が落ちて、血圧の振れ幅を体が受け止めにくくなるから。加えて40代は仕事の疲れ、睡眠不足、飲酒の翌日など、コンディションが崩れた状態でジムに行く日が増える。体そのものの問題と、その日のコンディションの問題が重なっていることが多い。まず呼吸と食事のタイミングを整え、それでも出るなら重量よりレップを減らす方向で調整する。

まとめ

  • 吐きそう・立ちくらみ・めまいの原因は「息を止めた後の血圧の急降下」「食後すぐ or 空腹」「脱水」「心肺の限界」の4つのどれか、または複合
  • スクワット・デッドリフトでは息を止めない。下ろすときに吸って、上げるときに吐く
  • バーを置いた直後にすぐ直立しない。一呼吸置いてから体を起こす
  • 吐きそう・立ちくらみを感じたらすぐ休憩。視界が暗くなったら座る、横になる。無理しない
  • 食事は1〜3時間半前、水は一口ずつ
  • 胸痛・失神・毎回起きる・症状が長引くなら、筋トレの工夫ではなく受診
  • 根本的な対策はHIITで心肺を鍛えておくこと
  • 40代はバルサルバ法(息を止める方法)は避けて、ベルトで腹圧をサポートする

次に読む

呼吸は重い種目ほど効いてくる。

  1. 筋トレと血圧 — 高重量と血圧の注意点
  2. スクワットのフォーム — スクワットでの腹圧の使い方
  3. デッドリフトのフォーム — デッドリフトと呼吸のタイミング
  4. 40代のBIG3入門 — 3種目を安全に始める順番と重量設定

※本記事は個人の体験と一般的な知見に基づいた情報です。トレーニングは自己責任で行い、痛みや異常を感じた場合は中止して医師にご相談ください。